人新世の「資本論」
斎藤幸平 · 2020
資本主義は搾取と押し付けの上に成り立っており、それが環境破壊や気候変動を引き起こしている。これを解決するためには、根本原因である資本主義を否定し、成長を前提としない脱成長コミュニズムへの転換が必要であるというのが要旨。問題意識には完全に同意で、納得できるし共感もできるが、脱成長コミュニズムが唯一の解決策だとは、いまのところは思えなかった。
理由はふたつ。
1)本当に社会実装できるの?
チェ・ゲバラが革命を起こして命を犠牲にして実現した社会主義国家キューバは、うまくいっていると言えるのだろうか。中国は。ソ連は。結局社会主義って実装しようとすると色々と問題が出てくるもので、いまのところうまくいった例はない、というのが答えなのでは?という疑問。
2)脱成長社会って楽しいの?
成長や競争がまったくなくなって、みんな同じになったとき、より美味しい食べ物、より良いサービス、イノベーションは生まれるのだろうか。より良い◯◯◯なんてもういらないよね、っていうのが脱成長なのかもしれないけどそれって楽しいんだろうか。
これまで資本論や経済学とあまり縁がなかったが、この本を通じてさまざまな考え方に触れられておもしろかった。わたしとしては、テクノロジーによる問題解決(バスターニ的立場)と、ピケティの再分配論はもっとも現実的な解決策に思えた。前者は成長を維持しつつ環境負荷を低減するという考え方で、後者は富裕層への課税によって格差を是正し、資本主義の暴走を抑制するもの。テクノロジーの活用と再分配の強化によって、資本主義を調整していくハイブリッド的な方向性に未来があるようにと感じた。ただバスターニ的な立場に立つと、エネルギー問題をどう解決するの?という点が大きな課題になりそう。それでもわたしはテクノロジーによって未来は明るくなると考える、テクノ楽観主義的な立場。
この本を起点に、斎藤幸平さんの考えのおもしろさを知ると同時に、相反する立場の考え方、マルクス主義などにも興味が湧いたという点で、インスピレーションを与えてくれる良本だったと思う。異なる立場の考え方をきちんと紹介してくれる点も良いと感じた。
読んだ日: 2026/05/04