職業としての小説家

村上春樹 · 2016

小説を書く方法の話や文学賞の話、小説のテーマ、登場人物についてなど、作家としての仕事にまつわるテーマが幅広く書かれている。私は小説家になりたいと思っているわけではないけれど、ライフワークとの向き合い方という意味で興味深く読んだ。

もし楽しくないのなら、そもそも小説を書く意味なんてないだろうと考えています。

サラリーマンと小説家は違うと言うのは簡単だけれど、どんな仕事であっても本質的にはこれに尽きるのではないかと思う。楽しくないならやる意味はない。本当にそう思う。

身体と精神についても印象的だった。村上春樹は長編小説を書くためには精神的な持久力が必要で、そのためには身体を鍛えることが重要と書いている。彼が毎日走ったり泳いだりしていることはよく知られているけれど、それを彼自身は「悪魔祓い」として続けているそう。それくらい闇に引っ張られる仕事なのだろうと感じた。小説を書くことを、人間の心の深いところまで降りていく作業と表現していた。そこは「井戸」みたいな場所なのかもしれない。そこはひとつ間違えれば戻ってこられないような深く暗い場所なんだろう。河合隼雄先生と深い部分で繋がっていたエピソードにも納得だった。

この本を読んで、村上春樹が小説で書こうとしているものが何なのかに、もう少しで届きそうな気がした。

読んだ日: 2026/03/14